Gazelle
2023年07月15日公開 770 Views

資産運用における現金比率を論理的に考える

2%のインフレ目標が日銀に課されており、実際にインフレも進んできた昨今、現金だけ持っていては損をするというのは明白であろうが、だからと言って株に全額投資すると心理的安全性を著しく脅かすことにもなりかねない。

ということで、今回は損をしたと感じない持ち株の比率を考える。

2%インフレ目標達成は10年で現金価値が18%目減りする

日銀が目指している2%のインフレ目標が無事達成されたとする。1.02を10乗するとおよそ1.22であるから、これまで100円で購入できていたものは、122円支払わないと買うことができなくなる。100:122 = x:100としてxを計算するとx=0.82となり、100円の価値は10年後は82円であり、18%の価値が目減りする計算となる。

アメリカの期待インフレ率は3%程度であるが、日本のインフレ率は給与の伸び悩みなどから引き続き相対的に低いものとなると予想してとりあえず2%と置いた。

資産1億円を持っているとすると、10年後には8200万円の価値しか持たなくなり、1年間あたり180万円が流出しているような状況である。この目減りを防ぐためには資産運用を行うことが必須である。

Fire達成の4%ルール

次に、Fireという理論があり、アメリカの話であるが、株式で年間7%の利益を生んでいれば、3%毎年物価が上昇したとしても4%の資産が増え、その4%の増加分で生活が賄えるならば、あとは仕事をやめて自由に暮らせるという理論である。FireとはFinancially Independent Retire Earlyの略であり、経済的自由を手にして仕事を定年前に辞めるという意味である。

ふざけた理論かどうかは別として、筋はある程度通る話である。日本ではFireの目安がおよそ1億と俗に言われているが、4%だと400万、株の税金が20%取られて320万円がFire基準である。まあ持ち家で子供の面倒が不要ならばなんとかなる水準であろう。

日本で株の収益率はどれぐらい期待できるか?

おおよそ日本の株はPER15未満が割安といわれており、トヨタはおおよそこれを下回る程度の水準である。PERは株価収益率で、現在の株価水準に対してどれだけの純利益を稼いでいるかを示す。

平たく言えば、100円で株を買うと、その会社が100円に対して1年でいくら稼いだかを示し、稼いだ額をZ円とすると、Z円*15 = 100円という計算式となる。Zは6.7となり、凡そ6.7円稼ぎ、その中から配当金や、次の成長投資を実現する。

この時株価は配当を出さないとするとざっくり6.7%上昇し、売った時に20%税金が取られるので5.3%程度が株式投資の期待収益率である。とりあえず保守的に5%を期待収益としよう。要するに1億円を持っていると1年後には1億500万になるということである。

インフレが発生している環境下では企業業績も伸びていくのではという予想はあるが、一方で少子化による国力の減退などで日本企業が衰退するという未来もあるため期待収益率は5%で買えないようにする。

目減りしないための現金比率

以上の過程から資産が減らない現金比率をXとした時の計算式は1年後のインフレ率を2%、また株の期待収益を5%とすると100X + 105(1-X) = 102(インフレ率が2%と仮定)となる。

これを解くとXは0.6でとなる。よって現金6割、株4割というのが現金価値を減らさないための最低限の防衛線という結論になる。この比率以下の人は持ち株比率を調整した方が良いだろう。

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