【用途別】CPUはIntelかAMDどちらがおすすめか?
CPUの範囲って分かりにくいのだが、マーケティング用語的にCPUといえば具体的には純粋なCPUに付随してグラフィックス機能やエンコード/デコードの専用モジュール、PCIe、USBなどを動作させるためのIO機能等々様々な機能が入っている。
第10世代IntelからはAIに特化したモジュール(GNA)などもIntelのCPUには組み込まれていて、単純なベンチマークの比較では実際に自分に合っているかは見えてこなかったりする。
そこでAMD CESの基調講演や、11th gen Intel CPUの発表からそれぞれの実力を探っていくことにする。
AMDはスレッド数に有意性あり
まずAMDはRyzenやThreadRipperというCPUが主力であるが、これらCPUのコア・スレッド数は同価格帯のものならばIntelに比べて多く、マルチスレッドが効果的なアプリケーションや処理に対しては有効に働く。
またプロセスルールという半導体の微細化の基準があるが、AMDが7nm(ナノメートル)に対してIntelは10nm(ナノメートル)である。半導体が小さいとそれだけ電力効率が上がることは想像に難くないだろう。
ただ、どこが7nmなのか?配線の太さなのか?トランジスタのゲート長なのか等所説あり、「7nmの半導体」に7nmの箇所はどこにもなかったという記事まで出ているので非常に怪しい。
正直な話プロセスルールはマーケティングのパフォーマンスと考えた方が良いだろう。
Intelはソフトウェア最適化、AI、専用回路に強みがあり
一方でIntelはAMDと比較して開発人数も多く、ソフトウェアの最適化は進んでいる印象である。
例えばプロセッサチップの中のCPU/GPU/その他のモジュールのどこにアクセスして演算処理をすれば最速の処理結果が得られるか?という問題に対してIntelはOpenVINOやoneAPIツールキットを用意し、ベンダーのアプリケーション最適化を容易にしている。
実際AdobeやGoogle、Microsoftといった多くの主要ベンダーはこの最適化を施した上でアプリケーションを提供しているため、AMDと比べるとボトルネックの発生が少なく、パフォーマンスが安定しやすい。
また、AIを使った演算処理を強化しており、
- DL Boost DP4a (GPU based Acceleration)
- DL Boost VNNI (Vector Neural Network Instruction, CPU based Acceleration)
- GNA (Intel Gaussian and Neural Accelerator, low power AI processor)
といった専用回路を備えている。複数AIアクセラレーターが存在する理由は、ひとことにAI処理といっても得意とする処理は分かれており、ケースバイケースで最適な処理を行う必要があるからである。
AIを使うインテリジェントな処理は分かりにくいと思うが、最近はいたるところで使われており例えば次のような処理が高速になる。
- 不鮮明な画像をクッキリさせる
- 不要な背景を取り除く
- ビデオ会議での雑音を取り除く
- 自動で写真からタグをつける
- 文法誤まりの検出
- 物体を認識した上でのトリミング
その他Intel Quick Sync Videoというエンコーディング/デコード用の専用回路を備えており、ストリーミングを行う時にCPUパワーを消費しにくい技術など用途に応じて様々な最適化を行っている。
CPUの基本性能の面ではスレッド数はAMDに劣るがシングルコア性能は高い傾向がある。
オフィスワーク/リモートワークはIntel
Word/Excel/PowerPoint等を動作させる時、高速に起動できるのはIntelのCPUである。これはオフィスソフトはマルチスレッドを回して起動を速くするような機能を持っておらず、シングルスレッド有意であることが関係している。
シングルスレッドはIntelの方が強いので、オフィスソフトの起動はIntelがスムーズに行える。
また、リモートワークでテレビ会議をすることが増えてきたが、そこには背景を消す処理、ノイズリダクションなど様々なAI BaseのFeatureが使われている。CPU使用率が100%になることが多いテレビ会議であるが、Intel Processorは必要な処理をCPU以外に割り当てる事でこれを回避することができる。
例えばノイズリダクションに関して、IntelはGNAに処理を委託することでCPUを消費せずに処理を行うことができる。テレビ会議中にパソコンが固まると他のメンバーに迷惑が掛かるので、処理を最適なプロセッサーに渡すIntelの処理は非常に有用である。
また、子供のリモート教室、オンライン英会話など活躍シーンは多いだろう。
3DレンダリングはAMD
映像編集の最後などで最終的な絵を出力する際、光の反射を計算して各ドットの最終的なRGB値を決定する処理があり、レンダリングと呼ばれている。
このレンダリングは非常に時間がかかる処理で、例えば映画シーンの1Frameをレンダリングするのに数時間など平気でかかってくる。
AMDはマルチスレッド性能の高さを活かしてこのレンダリング処理を最短で終えることができる。
毎年ラスベガスで開かれる家電見本市CESでAMDが2020年に行ったレンダリングデモでは、200万円のIntel Xeon CPUが1時間半かかる映画のレンダリング処理を40万円のAMD Thread Ripper CPUがわずか1時間で終えることができた。
3D映像編集を行うプロのクリエーターならばAMDのマシンは有効なはずである。
Youtuberの動画編集ならIntel
Intelはアプリケーションベンダーとの連携をしっかりと行っており、Intel CPUの性能を十分に引き出すことに成功している。
特にAdobeを使用するならばIntelは有利に働く。具体的には
- プレビュー再生でGPUを有効に活用してカクつかない
- ビデオのEncodeは専用回路に任せて素早く最終ファイルを書き出す
- サムネイル作成時の人物画像のトリミングは専用AIエンジンを使用し、選択が速い
などのメリットがある。デスクトップパソコンならば力任せにCPUに任せてどちらで行っても十分早いが、特に非力なノートPCでの動画編集ではこれらの差が明確に出てくる。
Intel側はAdobe動画編集での11世代CPUのメリットとして強く訴えている。
参考: Intel Blueprint Series: 11th Gen Intel Core Processors
映像編集用にRyzen CPU搭載のノートパソコンを購入するのは控えた方が良さそうである。ちなみにデスクトップパソコンならばスレッド数に物を言わせレベルを上げて物理でなぐるため
ゲームはノートパソコンならIntel/デスクトップは好みに応じて
ゲームはフレームレートでの性能比較が明確でかつ、CPUよりGPUが影響するのでそこまで考慮する必要は無いかもしれない。購入を検討するならフォームファクタによって検討する必要がある。
まずノートパソコンならばIntelがおすすめである。11th Genの1185Gなどお尻にGが付くシリーズはGraphics強化版であり、外付けGPUのエントリークラスモデル並みの性能を出すことでき、ハイエンドノートCPUならば市販のほぼすべてのゲームを30FPS以上で快適に遊ぶことができる。
デスクトップパソコンの場合はフレームレートを出す上ではIntelのCPUはシングルスレッドが強いため有利である。しかし、全てのコアをインテルCPUの少ないコアでは使い切ってしまうためCPUを他に回す余力がなくなってしまう。
このため他の作業をしながらゲームをするならRyzen、ゲームをする時はゲームに集中したいという人はIntelという棲み分けができそうである。
まとめ
同一価格帯のIntel CPUとRyzen CPUがあったとして購入のアドバイスをするならば次のようになる
- ノートパソコンはIntelが無難
- デスクトップはマルチタスクが多いならばRyzen、安定性を求めるならIntel
個々のベンチマークはCPU性能比較表 | 複数ベンチマークでCPUを簡単に比較でもまとめているので合わせて参考にして欲しい。
ただし、ベンチマークはパソコンのリアルな使用に必ずしも追随できている訳ではなく、アプリケーションごとのソフトウェア最適化ができているかという話などもあるので、鵜呑みにはせず、本日述べたことなども参考にして最終的なCPUを決定していただきたい。