RON_wanwan
2021年01月30日更新 281 Views

地銀連携 - その多様性の魅力 を読んでみて

下記書籍を読んでみた。
<書籍情報>
地銀連携 - その多様性の魅力
著者名:伊東眞幸
https://www.amazon.co.jp/地銀連携―その多様性の魅力-伊東-眞幸-ebook/dp/B00M3U0BXQ

地銀再編が叫ばれて久しいが、従来の地域金融機関そしてメガバンクに加えて、ネットバンク・小売業からの新興勢力が台頭し、厳しい競争下での舵取りを求められている地銀。今後の経営戦略の重要性が益々高まる中で、自行に閉じるのではなく、他銀が集まり効果的な連携をいかにとるかを、論じられた一冊。体系だって整理されており、地銀業務に携わっていない者でも分かりやすい。

個人的には日々SIer営業として業務にあたっているので、地銀だけではなく金融・他業界でも共通業務集約化、システム共同化にむけた連携ができないかという点で、参考になる内容であった。

下記、備忘録。

地銀連携の意義と進化

「地銀連携」というのは、コストの大きさから勘定系システムの共同化を主とした、「コスト削減指向」を指す場合が多い。しかしながら、このコスト削減を進めた現在でも、伸び悩む貸出、利鞘の縮小、マーケットでの資金運用など、地銀を取り巻く環境はさらに厳しく、手を打たなければ前年のトップライン(業務粗利益)を下回る状況である。この状況を踏まえ筆者は、今後の地銀連携は「トップライン増加指向」へ深化させるべきであり、それに向けては「戦略共創・ノウハウ提供型*」の地銀連携が必要なのである、と述べている。

*戦略共創・ノウハウ提供型の地銀連携
自行の取引先が他地銀のテリトリー内でビジネス展開する際、他地銀を紹介するといった対応だけでなく、どのような顧客に、どのような商品を、どのようなタイミングで、どう販売していくか等の営業基本戦略を含めた連携が必要である、としている。

地銀連携の展開

本書では下記4つの具体例が挙げられている。

①取引先を対象とした有料コンサルティング専門チームの共同設営
地銀の優位性は取引先をいちばん理解していることであり、その地銀が取引先からコンサルティング機能を期待されるのは当然のことである。しかしながら筆者は、経営危機先、営業不振先など緊急性の高い案件が重視され、成長見込先に関しては、十分なコンサルティングが行われている状況ではない、と指摘している。成長見込先のさらなるビジネス拡大に向けて、必要なコンサルティングを的確に提供していくためには、地銀間連携のもと、有料コンサルティング専門チームの共同設営が必要と述べている。

② 融資診断・営業推進に資する産業調査専門チームの共同設置
産業調査とは企業の業績状況をまとめ、また今後どのような構造変化がおこりうるかなどを分析する、実態動向調査となるものである。預貸金業務を行う地銀では、現状案件毎に審査対応をしている。しかしながら筆者は、資金使途・返済能力の検証を行うことにとどまり、業種の実態動向調査まで行われていないケースが多い、と指摘している。技術革新のスピードや、グローバリゼーションによる競争激化など取引先企業が置かれる状況を考慮すると、融資を行う役割の地銀がその業界の中での優位性を把握しておくことは重要であり、地銀間連携の上専門調査チームを共同設置すべきと述べている。

③ビックデータを使ったマーケティングモデルの共同開発
現在、銀行営業店への来店客数は年々減少傾向にある。加えて来店したとしてもATMで用を済ませてしまう取引先(サイレントマジョリティー)が増加しており、顧客のニーズを理解することが難しい状況である。こうした状況で顧客接点を維持するためには、地銀が持つ腕利きテラーのノウハウとビッグデータを融合したEBM(Event Based Marketing)の実践が必要である、筆者はと述べている。

④地銀共同センターを活用したビジネスマッチングの実施
取引先企業の多くは、彼らの事業にとってプラスとなる地域情報を提供されることを地銀に期待している。取引先企業は、あるものを売りたい、買いたい等、それに対する相手方の紹介を地銀に依頼する訳だが、地銀側では人依存、直感での対応を行うことが多い現状である。これに対し筆者は、担当者によって左右されないシステマティックな情報マッチング、具体的には各支店でマッチングできなかったものを本部で取り纏め、その情報を元に各営業店で広く相手方探しを行う仕組み、を構築すべきである、と述べている。またこの取引先のニーズは、全国各地に可能性があることから、地銀間連携の必要があるとも述べている。

ホームへ戻る